わんとの出会い

雨の日。
地下鉄に向かい、傘をさして歩いていると、
向こうからわんちゃんが、雨に濡れながら歩いて来ました。
小走りに、目を細めて。

”こんな雨の日に、一人（一匹）で？”と、
わんとすれ違って、
思わず歩みを止めて振り返って様子を見ました。

わんもそれに気づいたのか、二人の間が５m程離れてから、
こちらを振り向きつつ足を止めました。

そのまま二人とも様子を伺っています。

わんは雨に濡れながらじっとしているので、
せめてもと、私の傘に入ってもらおうと近づきました。

傘には入ってくれたけど、触れる距離に近づこうとすると警戒して離れます。

私が以前住んでいたご近所に、犬の散歩は犬に勝手に行って帰って来てもらうお家がありました。
”首輪してるし、保健所に連れて行かれる事はないと思うけど、一人で散歩・・？雨の日に？どこかへ向かって歩いていたようだし、私が止まってかえって邪魔しちゃったかな？”

”そのまま放って駅に向かうのも気が引けるし、今日の約束は母との思いつきの予定だし、急いでない。傘さしてあげたままどこか屋根のある所へ一緒に移動して、バイバイしようかな。”

「お前、家はどこだ？とりあえず屋根のある所へ移動しよ。ほれ行くぞ。」
と、前へ進んでも後ろへ進んでも、わんは一度止まったそこから動こうとしません。

”・・・迷子で腹減ってるのかな？一度うちへ寄って食べ物あげようかな。”
わんはちっとも動きません。

毛並みも良くてあんまり可愛らしい犬だったので触りたくなりました。
日本の種類の犬だと思います。好きなんです私。

首元に手を近づけるとビクッとして少し遠のきます。

”どうしたらいいんだろう・・。首輪してるし、このまま放っとこうか・・。しばらくうちで世話しようか・・。”
とりあえず、約束をしていた母に状況を連絡しようと電話。
「放っとくか、最悪は警察に連れて行くんだわ。」と母。
車だった母は、とにかく私の場所まで来る事に。

しゃがんで、わんと私で相合い傘をして、「お前家はどこだ？」「腹減ってるのか？」「迷子なのか？」とか、勝手にお話をしていました。

こっちをじっと見て、私の口の匂いをふんふん嗅いできました。
「ん？歯磨き粉の匂いだぞ〜」「お前の言ってる事分からなくてごめんな」

触ろうとすると、やっぱり少しビクッとします。

またしばらくして、私のズボンの匂いを嗅いだり口の匂いを嗅いだり。
少しずつ慣れて来たみたい。

「首輪、触らせてな。首輪、見せてな。」
少しビクッとしましたが、触らせてくれました。

電話番号と名前が書いてありました。
「電話番号書いてあるぞ！良かったな！」
”もしかしてただの散歩中かもしれないけど・・”とおっくうに感じながらも、とにかく電話してみました。
１０回コールしても繋がりません。
”やっぱ散歩？電話したら、いつもの事ですって言われちゃうかな？”

慣れてくれた様子で、首元をなでなでなでなでさせてくれます。

もう一度電話してみました。
飼い主「はい！」
私「わんちゃんがいまして、首輪に電話番号があったので電話したのですが・・」
飼い主「はい！探してました！！」
私「あー、良かった・・！寂しそうにしてたから・・。今○○の辺りにいますが、わかりますか？」
飼い主「はい！近くですので、わかります！迎えに行きます！」
私「あー、良かった〜！どのくらい掛かりそうですか？」
飼い主「走れば２、３分です！」
私「じゃあ、このまま待っていますね。」

わんちゃんが、このままじっとしていてくれる事を願いながら。

わんは、私の指やズボンや口の匂いをふんふんふんふん嗅ぎます。
本当にいい顔をしています。
めちゃんこ可愛いわんちゃんです。
私も首をなでなでしていました。

母が到着しました。
車からバタン！と降りる音を聞いて、わんがビクッとして、座っていた腰を挙げて逃げようとしました。
やばいっと思って撫でていた手でわんをおさえました。
”早く飼い主来て！！”

次の瞬間飼い主が二人で走ってやって来ました。
”良かった！！”

ペコペコと頭を下げて下さって、わんは紐に繋がれ、
その場から全く動かなかったのに、再びトテトテと歩き始めました。

良かったねぇ〜良かったねぇ〜

またお家に帰れるねぇ〜

お家帰ったら御飯たっぷり食べれるね〜

程よい肉付きで毛並みも良くって顔も良くって愛されてるね〜
その飼い主さんの所にまた帰れて良かったね〜

飼い主さんも、大事なわんちゃんが見つかって良かったですね・・！

私も今日は急いでなくて良かった。
約束の相手が母で良かった。
わんに気づいてあげられて良かった。
電話を掛け直して良かった。


全てはスムーズでした。
協力してくれた皆さんありがとう。
可愛いわんちゃんとの出会いをありがとう。
心がほっこり温まる経験をありがとう。
わん、元気でな〜！！！